2016年6月24日金曜日

ガレノス『ティマイオス敷衍』(4)

IV―創造主は世界のなかの魂を、分割されずつねに同じ状態に存続している実体と、物体のうちの分割されるものから作った。よって世界のうちに、つねに同じ状態に存続している実体の本性と、べつの実体の本性を作ったのだ。「分割されないもの」とは〈…〉という意味で、「物体に〈分割されるもの」〉とは、質料のうちの生得的運動という意味で、彼はすぐあとで、そのうちには永久性(al-azaliyyah)があると言っている。彼の意見によれば、もし魂が運動の始まりで、質料がそれ自体で運動するならば、質料が魂をもつことは明らかである。さもなくば質料のうちの魂は混乱し、定められた秩序によらず運動することになる。そのため、創造者(至高なる神に讃えあれ)は質料を整序と秩序に従わせようとして、質料のうちに、本性的につねに同じ状態に存続する魂を作ったのだ。
 それからティマイオスはこの話のあとに、世界の魂がどのようにしてその諸部分に、構成の比例に従って分割されるか描写し、そこで数値を示している。それを終えてから、こう言った:「創造者はその全体を縦にふたつの部分に分割し、両者を互いにもう一方に送り、両者の形がギリシア人の書物におけるش(shīn)の形、つまりXの形になるようにした。そして両者を折り曲げて、片方がもう一方とつながっているふたつの円になるようにした。」(36b–c)この文章で示されているのが、黄道の天球の円と、赤道の円であることは明らかである。また赤道の円の運動はすべての天球の運動と等しくない。この運動のなかには黄道の天球の円が含まれているので、創造主は外側の円を分割されないままにし、内側の円を六か所に分割し、それらから構成の比例に従って七つの天球を作った。魂の実体を分割するとき、彼はこの構成の比例について語った。彼が「七つの天球」で惑星の星々の天球を意図していることは明らかである。
そして彼は言った:「これら七つの天球のうち三つは、同じ速度で運動する。」(36d)つまり、太陽(al-shams)の天球、金星(al-zuharah)の天球、水星(ʻuṭārid)の天球のことである。しかし金星はこの名前で呼ばれず、彼はそれを夜明けの星(kawkab al-ṣubḥ)と呼んだ。そして外側の円を、同じ状態に存続しているものと呼び、内側の円を相互に異なるものと呼んだ。それから彼は、正しい思いなし(al-ẓann)と確信(al-yaqīn)が相互に異なるものの本性からいかにして生じ、知識(al-ʻilm)と知性(al-ʻaql)が同じ状態に存続しているものからいかにして生じるか明らかにした。

(3) (5)

*底本はKrausとWalzerの校訂版。
あくまでも私訳のため、その点をご了承願います。逐語訳よりも、日本語としての読みやすさを優先してあります。また、随時更新する可能性有り。

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